ストレスが心身の健康度を低下させること,ストレスがうつ病などといった精神疾患発症のトリガーとなること(ストレス脆弱性モデルと呼ばれます)は,近年,より共通して理解されるようになってきました。また,2015年12月から50人以上の事業所にストレス・チェックを実施することが義務化されるように,ストレスに対する興味・関心,またストレスを低減させることや発生しないように予防することへの社会的ニーズは高まりを見せています。うつ病をはじめとし,不安症やその他多様な精神疾患は,医学的な治療(診察)を受け,適切な薬物を用いた治療は必要不可欠です。また,ストレス脆弱性仮説に基づくと,ストレスを上手に対処するスキルを手に入れる必要があるといえます。こうした中で,ストレスに打ち勝つためには私たちは何ができるでしょうか?たとえば,ストレスを発生させる源(ストレッサーと呼ばれます)を絶つことは,ストレスの反応(ストレス反応と呼ばれます)を生じさせないためにも必要不可欠といえます。一方で,ストレスを発生させる源を完全になくすことは難しく,ストレス反応に対する具体的な対処(コーピング)をうまく採用しながら,ストレッサーやストレス反応とうまく付き合っていく必要があります。ここでは,数回のシリーズで,ストレスや人間関係,うつのメカニズムやその他,臨床心理学やカウンセリングの世界で読み解くことができる私たちの日常生活上の課題について考えてみたいと思います。