つい昨日,パーソナリティ障害に関係する研修会でお話をさせていただきました。パーソナリティ障害は,A群・B群・C群に大別され,その中にそれぞれ数個のパーソナリティ障害が存在しています。たとえば,B群には「境界性パーソナリティ障害」や「自己愛性パーソナリティ障害」などが含まれます。詳しくは別の機会にお話ししたいと思いますが,今日は特に境界性パーソナリティ障害をみてみましょう。

自分とは何か?

 さて,境界性パーソナリティ障害の特徴として,感情のコントロールの難しさや他者から見捨てられることに対する不安(見捨てられ不安),自傷行為などが挙げられます。こうした特徴の背景には,ちょっと難しい用語ですが「自己像の脆弱性」と呼ばれるものが潜在していると考えられます。自己像の脆弱性とは,「自分とは何か」「自分の価値とは何か」「自分は生きている価値があるのか」などといった「自分」を保つことの難しさと説明することができます。

自分を探すために

 「自分とは何か」「自分の価値とは何か」「自分は生きている価値があるのか」を探す時,みなさんならどうするでしょうか?いろいろな方法があると思いますが,その一つに「他者から認められる」ということが挙げられます。しかしそこで自分が思っているように他者から認めてもらうことができないと,非常に混乱し傷ついてしまうこともあるでしょう。そして,そこには見捨てられ不安と呼ばれる不安が影を潜めており,見捨てられ不安をかき消すかのように,不安定な対人関係を築くこともあります。具体的には,過度の依存などが挙げられます。

落ち込みや不安

 さて,不安定な対人関係や傷つきの体験は,非常にエネルギーを消耗するものです。そして,エネルギーの枯渇した状態は,落ち込みや不安を生む原因ともなり得ます。調子の悪さの背景には,実はパーソナリティ障害のようなものが潜在している可能性も考えられるのです。

パーソナリティ

 パーソナリティは誰しもがもつものです。「パーソナリティを変えて」と言われて簡単に変えられるものでもありません。パーソナリティ障害の特徴や傾向は,健康的に生活を送る人々の中にも見ることができます。ポイントはパーソナリティ障害の特徴により,日常生活が阻害されていたり,それにより本人や他者が困っているかどうかです。困っている場合に治療や支援の対象者になり得ます。

治療と支援

 パーソナリティ障害に限らず,十分に精査した後に適する方法を選択する必要があります。認知行動療法や精神分析的な心理療法,弁証法的行動療法などさまざまな方法があり,少しでも生活しやすくなることを目指します。